お子様も大きくなり、K様ご夫婦が二人だけの最後の住まいを作ろうと思った時、
ほぼ全てのご友人がマンションを勧めたそうです。
でも、K様ご夫婦の選択は戸建てでした。
庭があり、生活のしやすさではない異空間を作れるのは戸建てだと思われたそうです。
雑誌やメディアでは老後の住まいについて色々と書かれています。
でも、住まいとは何か?という根本的な問題に対する答えは人ぞれぞれ。
K様の選択は家に関わる仕事をする私にとって、とても大きな命題を頂いたようでした。
そんなK様の建てられたのは、無垢をふんだんに使った和モダンの家。
イメージが明確でしたので、お店での生地選びも順調に進み、
あとは現場での生地合わせのみとなっていましたが、
そこでふと私の脳内をある疑問が通り過ぎました。
『確かに合うけど、これはK様が家を建てる前にイメージした空間になっているだろうか…』
カーテンの場合、家に合う生地は一つではありません。
だから、ベストな生地でなくても良い感じに仕上がってしまう事があります。
自分がK様になったつもりで、出来上がった部屋をイメージし、
現場打ち合わせの際にご提案してみました。
K様はとても喜んで下さり、ご採用頂いたのがコチラです。
ナチュラルから真っ先にイメージする色、グリーンは日常を連想させるので敢えて避け、
テーマカラーはオレンジに。
リビングにはプリーツスクリーンを付けました。
使い勝手を考えればカーテンですが、K様のイメージを考えれば、便利さよりも非日常感が優先です。
2階は吹き抜けのホールと和室が続く、独特の空間です。
扉は通常開けておくとのことでしたので、
繋がりを保ちつつ、区切りを感じさせる仕上がりにしました。
居室として使う和室はドレープのプレーンシェード、
外からの視線が気にならないホールは麻調のレースをメインに和室の生地を両端に使って
サイドボーダーのシェードにしました。
工事後、工事の際にいらっしゃらなかった奥様から、
とても丁寧なお礼の電話を頂きました。
『ただ部屋に合う生地ではなく、その人らしい生地であること』
を教えて下さったK様に心からお礼を言いたい気持ちでした。
K様、ありがとうございました。