学生の頃、某商社の単身赴任寮で管理人のアルバイトをしていました。
夕方6時から夜の10時まではフロントで帰宅する方の確認と電話の取次ぎ、
その後は就寝前の見回りという簡単な仕事でしたが、
週6日勤務でしたので学校帰りや休日に遊びに行くこともできず、
時間があると有楽町に行って映画を見ていました。
一番印象に残っているのが「マイライフ・アズ・ア。ドッグ」。
「自分の人生は辛いけど、宇宙船に乗せられた犬よりマシさ」と思いながら、
成長する少年の話です。
最初の印象は「退屈」でした。
見た後も特に何らかの気持ちの動きがあったわけでもなく、
何か自分の人生に影響を与えるような予感も全くなく。
でも、なぜかもう一度見たんですよね。
当時はバブル真っ盛り。
スキー、サークル、飲み会、ディスコ…
狂騒的な世の中と奨学金と住み込みアルバイトの自分。
そういうの、あったのかもしれません。
そんなことを思い出したのは、
Y様のお宅にはご家族と長く人生を共にしているワンちゃんがいたから。
玄関には表札から顔を出す写真が飾られていて、
主人公のイングラムが成長できたのは実はあの言葉のお陰ではなくて、
愛してくれる人が周りにいたからだよな、なんてことを思っていました。
そんなY様のお宅では、家にいる時間をより楽しめることをコンセプトに、
各室に世界各地のイメージを持たせた空間をお作りしました。
まずはリビング、イタリアから。
白黒のモノトーン、イサムノグチのテーブル、観葉植物、幾何学模様のクッション…
そんなモダンテイストの空間には
バーンアウトプリントのシアーを手前にしたフロントレースです。
滑り出し窓側は遊歩道に面しており、
一般的なレースではシェードにすると中が見えてしまいます。
そのため、モダンでありながら中が見えにくいもの、という生地をお勧めしました。
丹沢山麓を望むバルコニー窓はカーテンで。
こちらは逆に夜以外はレースも閉めないということで、
夜も楽しめるフロントレースがピッタリでした。
観葉植物を挟んだダイニングは、
あえて違うレースにしました。
使用したのはポルトガルのブランド「アルデコ」のレース。
カーペットの柄に合わせてのセレクトです。
シンプルになりがちなモダン系インテリアですが、
シンプル=楽しめない、ということではありません。
ほんの少しの変化がお部屋に大きなアクセントを与えてくれます。
これだけ書いてまだリビングですので、お次は次回に。
世界一周の旅は長いのです(笑)。