初めてご来店された時、Y様は病院を退院されたばかりでした。
家をご新築されるタイミングでの入院に精神的なご負担も大きく、
インテリアとしてのカーテンというより、
陽を遮りプライバシーを守る布をご必要とされていました。
納品後にお聞きした『実は既製カーテンでもいいと思ってたんです』という言葉は、
実際に納品したカーテンとのギャップがとても大きく、
私が今までお客様からお聞きした言葉の中でもベスト3に入るほどの衝撃でした。
そんなY様にお打合せでイメージをお聞きした時、
すぐに出てきたのは『お姫様』でした。
Y様がお帰りになられた後、私はデザインを描く紙に向かって考えました。
お姫様という言葉を、Y様の気持ちを表す言葉に変えた時、
それはどんな言葉だろう?
その言葉をインテリアで表現した時、それはどんな形になるのだろう?
それでは、私とY様で作った宮殿にご案内しましょう。
まずは玄関
ここは深紅のベルベットにスワッグバランスです。
優雅さを出すために浅く多いヒダにし、カーテンの丈は長めにして裾を床に垂らしました。
1階にはY様邸の大きな特徴であるバレエルームがあります。
貴賓さと優雅さをテーマに、こちらもにもスワッグバランスを付けました。
ボーウインドウはメリハリを付ける為に裾をデザインカットしたフラットバランスに。
シェードにせず、あえてカーテンにすることで優雅さを出しました。
階段を上がるとリビングです。
奥のボーウインドウは天井が一段下がっているので、
少し低めのスワッグバランスにしました。
寝室をご案内しましょう。
ベルベット調の無地の上部にゴールドのフリンジを付け、
豪華でシックな仕上がりにしました。
レールはブラックのアイアンレールを合わせて、
他のお部屋と少しイメージを変えています。
もしこの写真だけを単なる施工例として見れば、
豪華なスワッグバランスに目がいくだけかもしれません。
でも私とY様にとっては、きっと違います。
私たちにとっては、カーテンそのものではなく、
カーテンが与えてくれるものが重要なのです。
それが形に出来たからこそ、Y様は泣いてくれたのだと思っています。