アリバイカーテン

以前広告関係の仕事をしていたので、
商品PRのキャッチコピーにはある程度、理解?のある私ですが、
これが今自分のいる業界の事となると、
『オイオイ!ちょっと待て!』と言いたくなります。
特に最近は、お客様受けの良い言葉を並べて高品質を装う商品が多いようです。
私はこれらを称して『アリバイ商品』と呼んでいますが、
そのキャッチコピーが決して嘘ではない(←ココがポイント)だけに、
一般の方には分かりにくいのです。

カーテン業界で言えば、
『3ツ山・2倍ヒダ・裾は10cmダブルでウエイトバー付きの高級縫製仕様!』
というのが定番です。
確かに嘘ではありませんが、この条件を満たせば、
(実際の品質はどうあれ)高級仕様とPRできて、
お客様受けが良いだろうという考えが先にあるのが問題なのです。

先日川島織物セルコンの高価格シリーズ『フィーロ』の納品に行って来ました。
トップシェードとカーテンの裾にトリムを付け、
同じシリーズのタッセルを合わせてあります。

I邸リビング

 

 

 

 

 

 

I邸リビングトップシェードI邸リビング裾

 

 

 

 

 

 

当店では他のカーテン同様、フィーロに関しても提携加工場で縫製しています。
縫製仕様は以下の内容です(生地により例外もあります)。
①山…90mm芯地・2点止めV字山・十手フック
②耳…25mmダブル・本縫い
③裾…12cmシングルメローロック・掬い縫い・サイドウエイト付き
*ポリエステル100%生地は形状記憶加工付き

山仕様裾仕様

 

 

 

 

 

 

2点止めの山は川島織物セルコンやフィスバなどが採用していますが、
『山の裾を叩くだけ』といった簡単なものではありません。
私がどうしても採用したかった縫製仕様で、
山の根元で絞られたラインが裾に向けてフワッと広がるラインが非常にきれいです。

裾を12cmのシングルにしたのは、特に形状記憶加工付きの場合、
折り返しになる裾部分が強くかかっているように感じたからです。
(ポリ成分が多くなることと関係あるのでしょうか?)
掬い縫いの場合、これはミシンにもよると思いますが、
『薄すぎても厚すぎてもダメ(=きれいに掬えない)』ということがあり、
救い縫いの強度も考慮して12㎝のシングルロックにしました。
実際、フィーロのサンプルを製作したところ、何点かは本縫いになりました。

耳はフィーロ同様30mmも試しましたが、どうも大きすぎる感じがしてやめました。
本縫いにしたのは裾と違いダブルのためで、
ある縫製業界関係者からは「耳も掬いで合わせた方がいいんじゃないか』という
意見もありましたが、最後は加工の現場の方の意見を採用しました。

縫製仕様に関しては、メーカー縫製も自社縫製も本当に様々です。
当店と異なる仕様のお店も多々あると思いますが、
『本当にお客様の為を思って考えられた仕様なら全て正解』だと思っています。
問題なのは、本当に質を高めるのではなく、
そのように消費者に思わせればOKという『アリバイ商品』が多くなっていることです。
実際当店の裾使用はシングルですし、
形状記憶加工付きならウエイトバーは要らないという考えもあります。
どちらもアリバイ商品に謳われる『高級仕様』とは異なります。
大事なのは、キャッチコピーを作るためではなく、
本当に良い縫製仕様を考え続けることだと思っています。
アリバイはいつか、崩されるものです。

窓際のサイトー について

厚木市のオーダーカーテン専門店+PLAN(プラスプラン)オーナーの斉藤です。単なる生地の組み合わせではない、専門店ならではのプランニングをご提供します。ブログでは、そんな私とスタッフの日々の仕事ぶりを綴っています。
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