自他共に認める活字中毒の為、
暇な時は身の回りの活字を探してしまいます。
電車に乗れば雑誌の中吊り広告がターゲット。
気がつくと、赤ちゃんもいないのに『たまごクラブ・ひよこクラブ』とか
ペットもいないのに『いぬの気持ち』なんて雑誌広告まで読んでます(笑)。
『マナーが悪い』と怒られるのですが、食事もついつい新聞片手。
家で朝日新聞を読みながら朝食を食べ、店で読売新聞を読みながら昼食です。
1面を読んでないのに編集手帳を読むというワケの分からない読み方ですが…。
いつからそうなったのかなあと思い返すと、
きっかけは浪人時代に司馬遼太郎の本に出会ったことでした。
それまで兄の読書感想文を盗用した程の本嫌いだった私が、
寝る間を惜しんで読みふけりました。
中でも最も心動かされたのが、『竜馬がゆく』。
第3巻の初めの方の右頁に書かれていたあの詩に励まされたのは、
私だけではないでしょうし、
読み終える時に竜馬は死ぬのかと思うと、
なかなか最後の数ページが読めなかったのも私だけではないと思います。
『全ての若者は竜馬を目指す』の言葉通り、私もその一人でした。
実は以前、司馬遼太郎氏にお会いしたことがあります。
もう14・5年前になるでしょうか。
お正月休みに『坂の上の雲』を読み終えた私は、
暇なこともあって本の舞台になった戦艦三笠を見に横須賀に行きました。
すると切符売場の女性が、『先生がお見えになってますよ』と言うのです。
意味が分からず聞き返すと、何と司馬遼太郎氏が取材に来ていたのです。
心躍るとはまさにあの時のことで、
艦内に入っても落ち着いて展示物など見ていられません。
すると、『コン、コン、コン、コン』と鉄の階段を上がってくる音がします。
司馬遼太郎氏ご本人でした。
『街道をゆく』の取材中だったらしく、お付の方も数人ご一緒でした。
勇気を振り絞って足を前に進め、
『先生、実は私今日先生の本を読んでここに来ました』と話しかけると、
お付の方から『本て、何の本?』と聞かれたので、
『司馬先生の坂の上の雲です』と答えると、先生は非常に喜んでくださいました。
あの時の柔和な笑顔と、
握手をして頂いた時の分厚くガサついた手の感触は、今でも忘れられません。
今日もいつも通り新聞片手に昼食を取りました。
編集手帳のテーマは『人間はいつ大人になるのか』でした。
私の場合は、『竜馬のようにはなれなかったけど、今の自分もナカナカかな』と
思えるようになった時かもしれません。
一昨日は、菜の花忌(司馬遼太郎氏の命日)。
ひたすら読書に没頭した若かりし日々を思い返すお昼時でした。