Roll It Up !

私たち窓業界で働く者には当たり前でも、
お客様には耳馴染みのない言葉というのがあります。
ダブルシェード、ノンビスタイプ、ドラム式、リターン、ウエイト巻ロック…
特に和製英語が多いので、お客様にはイメージし難いのかもしれません。
ある翻訳家のように 『I Love you』 というセリフを
『今宵は月が綺麗ですね』 なんて訳してくれたら良いのですが、
フランク・ザッパの曲 『No Not Now』 の邦題が
『今は納豆はいらない』 になってしまった例もあります(笑)
無理に日本語に直すのは難しいかもしれません。

ロールスクリーンという言葉も同様です。
お客様にご説明する際は
『一枚の布みたいなもので、下に下がっている紐を引っ張ると
クルクルッと巻き上がる商品です』なんてお話しします。
(ボキャブラリーが貧困?)
そんな説明をする商品ですが、
実際に取り付けるのはプルコード式ではなくチェーン式がほとんどです。
私がプルコードもオススメするのは 『腰高窓の正面付け』 のみで、
その場合も基本的にはチェーン式をオススメします。
特に天付けにプルコード式の場合、

・キッチリ閉めたい時に、止めたい所で止まらない(下が空く)
・閉めた時にコードが垂れ下がりだらしなく見える
・巻ズレが起きやすい為、窓枠に当たる

などの欠点があるからです。
今回の現場も天付けでチェーン式です。

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チェーン式の方がプルコード式より生地の両脇の隙間は少し大きくなりますが、
操作方法を選ぶ際の重要な選択肢になるほどの差ではありません。
今回使用したのはトーソーのTR8167という遮光生地で、
通常遮光性を求められる場合は正面付けにしますが、
ワケあって天付けとなりました。

些細なことですが、当店で取り付けの際に気にしているのが『左右のバランス』です。
チェーン式の場合、チェーン側の方が隙間が大きく開いてしまうので、
メカではなく生地でバランスを取っています。
今回の窓は内寸605mmで600mmでの発注でしたが、
非チェーン側(写真左)は5mm空き、チェーン側(写真右)はドン付けです。
これで生地はほぼ窓の中央に来ます。

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一般的に『生地選びや取り付けが簡単』と言われるロールスクリーンですが、
小さな事の積み重ねで仕上がりや満足度は大きく変ります。
ちなみに今回のブログタイトル『Roll It Up』の日本語タイトルは、
『この現場はロールスクリーンがとてもキレイですね』であって、
『今は屁理屈はいらない』ではありません(笑)

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悲しい知らせと耳の痛い話

川島織物セルコンさんから、とても悲しい知らせが届きました。

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東京ショールーム移転!
なぜ悲しいかと言いますと、
毎年ブログに書いていた高校バスケットボールのウインターカップは、
線路を挟んで反対側の東京体育館で行われていて、
ショールームの冬期休暇を良いことに駐車場を借りていたのです(笑)。

この大会を見に行くのを毎年楽しみにしていたのですが、
今年はタイムズに入れないとだめなようです(泣)。
東京の駐車場って一体一日でいくらとられるんでしょう?
ちなみに私が大ファンの明成高校の試合はYouTubeにアップされていて、
我ながら良く飽きないなあと思うほど見ています。
高校バスケ独特の雰囲気も良く伝わる映像です。
(音を大きくして解像度を460にして見て下さい)

明成高校のオフェンスはモーション・オフェンスがベースになっています。
インディアナ大のボブ・ナイト氏が考案した方法で、
名選手でない集団がスター軍団に勝てる唯一のオフェンス法とも言われます。
15年ほど前、ある高校でバスケのコーチをしていた私は、
バスケ雑誌に連載されていたその詳細を読んで、震える程の感動を覚えました。
言葉では言えない、でも頭でイメージした時に浮かんでくる理想のオフェンスが、
そこには明確な言葉で書いてあったのです。

でも同時に、これをマスターするのは高校レベルでは無理だとも思いました。
それが15年経った今、明成高校によって完璧に実現されていたのです。
しかも、名監督である佐藤監督のオリジナリティもプラスされて。
スカウティングと外国人選手に頼る強豪校と互角に渡り合う姿は感動的でした。
でも…毎年もう一歩及ばないのです。
『ここまでが限界。逆にここまで出来ることを証明しただけでも素晴らしい』と
誰もが思っていたはずです。

そして昨年末のウインターカップ。
そこにあったのは、今までと何かが違う明成高校でした。
走り廻ってかく乱するスタイルが少し大人しくなったような印象です。
その理由はすぐに分かりました。
ガードの畠山君が右手を上に挙げ掌をクルクルっと廻した瞬間、
いつものあのオフェンスが始まったのです。
そうか! 例年、最後は疲れが足に来て引き離されてしまうケースがあったのを、
今年は状況に応じて使い分けることで体力を温存する作戦だったのです。

私が 『これ以上チームの完成度を上げるのは無理』
と思っていたほど素晴らしいチームには、まだ 『その先』 があったのです。
そして昨年末の大会では見事、悲願の初優勝!
スポーツを見るとつい自分の仕事に置き換えてしまう私には、
非常に勉強になる試合でした。

でも一番印象的だったのはタイムアウトの時です。
佐藤監督は選手を集め、館内に響き渡る声でこう叫びました。
『俺たちは死ぬほどやってきただろっ!!』
ズキッ!反省しなければ(苦笑)

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第3の男 再び

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先日ブログでご紹介したA様から、お引越しの案内状を頂きました。
タイトルバックには、裾ボーダーで使用した生地のカラーコーディネーション!
思わずグッときてしまったので、ご紹介してしまいます。
A様、素敵なお葉書きありがとうございます!
葉書きが届いた日の第3のビールは格別でした(笑)

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第3の男

カーテンの仕事には、

1)生地の組合せを決めるプランニング
2)寸法等を確認する採寸
3)取り付け工事

という大きく分けて3つの作業が必要となります。
一般的に、お客様が最も重要視するのはプランニングです。
見積もりを取ったり、提案力を確認したりと店選びの大きな要因になるからです。
その次が取り付け工事でしょうか?
採寸は『寸法を採るだけ』という誤解があり、
重要度は3番目に思われていかもしれません。
しかし私たちカーテン屋にとっては非常に重要な作業です。
採寸次第で商品がきれいに納まるのか否かが決まるからです。

本日お納めしたI様の現場です。
まずはリビング。

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一間半の掃出し窓にクラシック柄のドレープとトルコ製エンブロイダリーの組合せ。
レールは木製レールを使用しました。
通常(天井高240cm・サッシ内寸200cm)の場合、
当店では窓枠より10cm上をカン下にしています。
これはカーテンの山部分が窓枠より上にきた方がきれいな為です。
逆にあまり高いと一体感がなくなります。
今回は天井高260cmで窓巾も大きい為、18cm上をカン下にしました。
採寸時に窓の寸法だけではなく天井高を確認し、
プランニング時にお話しした『通常の位置』では少し低いことをお話しして、
実際に吊りサンプルを窓に当てながら、I様と相談の上決定しました。

2Fの子供部屋です。

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左側のベランダ窓はクローゼットと干渉しているので、
通常の取り付け位置では扉が当たってしまい完全に開かなくなります。
最近良くあるケースです。
その場合レールを扉より上の位置に取り付けますが、
今回はL型ブラケットを使っています。

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カーテンの山部分にはアジャスターフックが入っていますが、
これが扉に当たる位置ではあまり意味がないからです。
硬いアジャスターフックは扉に押されても『ふにゃっ』とならず、
扉は十分に開きませんし、カーテンの山部分がとってもお辞儀します。
その為当店では、
『クローゼットの扉がドレープのアジャスターフックより下にくる位置』
をオススメしています。
今回L型ブラケットを使用したのは、
通常のダブルブラケットではこの寸法が確保できない為です。
これも採寸時に確認し、I様と相談の上決定した取り付け方法です。

3つ目は出窓です。
普通に機能性レールと出窓用カーブレールをつけているように見えますが…

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通常のブラケットより壁からの出幅が1cm長いロングブラケットを使っています。

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出窓は窓台のチリ(出っ張り)が多く、
通常のブラケットではそこにカーテンが乗っかる感じになるためです。
1cmの差では完全に解消はしませんが、確実に印象は違います。
窓台のチリは採寸時に確認しなければならない重要事項です。

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最後は間仕切りに使った縦型ブラインドです。

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『下地は入れてくれてたような気がする』というお客様の言葉でしたが、
お引渡し前の為、採寸時に針を刺してチェックは出来ません。
通常、野縁(天井の桟)は家の長手方向と平行に入っているので、
『野縁と直角に打つのでおそらく大丈夫ですが、両端がアンカーになるかもしれません。
 ブラケットを増やして荷重を分散させましょう』
とお話ししました。
と、実はこれは店でのプランニング時のお話し。
実際には下地があり問題ありませんでした。
現場で確認したのが下の写真です。

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付いていたのが化粧の廻り縁です。
『普通の廻り縁より出っ張りが多い分、隙間が気になるかもしれません』
とお話しし、ご了解を頂きました。
実際取り付けてみるとあまり気にならず私もI様も一安心でしたが、
『結果オーライ』というワケにはいかないのがカーテン工事です。
採寸時にはこういった点の確認も必要です。

I様の現場ではこの他にも、
図面では分からなかった点を採寸時に確認し、
取り付け位置や方法をご相談した窓がいくつかありました。
全て無事に工事も終わり、
I様から『サイトーさん!いっぱい宣伝しとくからね!』と言って頂きました。
ありがとうございます!

採寸は、プランニング、取り付け工事の次に来る3番目に重要な作業ではありません。
ここにカーテン屋のウデの見せ所が隠されています。
そして、こういう仕事が出来た日の第3のビールは最高です(笑)

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間が悪い夜は

昔からタイミングが悪いというか間が悪いと言うか…
部活の引退試合の前に骨折したり、
体育祭の前日に交通事故に遭って頭を2針縫ったり、
(あの時はメッシュの帽子みたいなものを被せられた挙句、
器械体操で皆が格好良くエッフェル塔を作っている時に
1人で両手広げてサボテンやらされたなぁ。
今から考えればパリにサボテンがあるワケないじゃないか!)
バイト先のマネージャーのモノマネをしてたら後ろに本人がいたとか、
転倒したバイクがクラウンに向かって一直線!(修理代29万円也)とか、
どうもそんなことが多いような気がします。

今年に関して言えば3月の繁忙期は忙しくなかったのに(半忙期?)、
4月になったら急にバタバタと…
ペットが飼い主に似るように店はオーナーに似るのでしょうか?
さて、階段の明り採りの窓にウエーブロンのシェードを付けました。

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生地はスミノエのD6503です。
採寸時に生地を合わせたら少しぼやけた印象でしたので、
花の色に合わせてオレンジ色のバイアステープを付けました。
ウエーブロンは夜にも遮像効果を発揮するレースとして知られていますが、
『一般的なレースに便利な機能がプラスされている』 のではなく
『一般的なレースに便利な機能がプラスされてるが、それに伴う欠点もある』
というのが正しい捉え方になります。

最大の欠点は『外から見られない分、中からも見えない』という点です。
これはミラーレースも同じですが、
日中は窓から見える景色も含めて部屋の広さを感じますので、
それが遮られると非常に圧迫感を感じます。
基本的には居室に向かない商品だと言えます。

ウエーブロンを使う窓で最も多いのは、今回のような廊下や階段です。
景色を楽しむ窓ではない場合が多く、
採光と昼夜のプライバシー保護が必要で、
ドレープとのダブルにしなくても良い分、
壁からの出幅もお客様の出費も少なくて済むからです。

生地を選ぶ際には遮像効果の強さをチェックすることが重要です。
当店では下の写真のように、
内側から照明が当たる状況でチェックして頂いています。

 
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いつもは私が裏に入るのですが、今回は観葉植物を入れて撮影しました。
同じウエーブロンと言われるレースですが、
右の生地は観葉植物がぼんやり見えるのに対し左の生地はは全く見えません。
少しでも昼の景色を楽しみたい方には右の生地が、
少しでも外から見られたくない方には左の生地が適していることになります。
特に、夜は小さな窓でも目立ちますので、お選びになる際は注意が必要です。
窓越しにパジャマ姿のお隣さんとバッタリ!なんてやっぱり気まずいものです。
お客様には私の間の悪さはうつらないとは思いますが…(笑)

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アフターは悲しみの調べ

寝ぼけ眼の朝の私にガツンと気合を入れてくれる朝の車中のテーマ曲、
スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)のCDがいきなり壊れてしまいました。
電化製品なら叩いて直しますが、CDの場合はやはり
『必殺!息をハッ~と吐いてティッシュで拭き拭き攻撃』です。
信号待ちの度に朝から必死になってこんなことをしている自分がガラスに映ると、
とても悲しい気分になります(笑)。

さて、3年前にご新築でお世話になったI様から
シェードの昇降不良のお電話を頂き伺ってきました。
メカはトーソーのパディナ・ツインタイプ・コード式で、
この時期に製作されたメカに起こりやすい症状です。
私のブログにも『シェード 故障』とか『シェード 止まらない』という
フレーズで来られる方がいらっしゃいますが、
購入された販売店かメーカーに問い合わせをしてみて下さい。
コードストッパーを交換すればすぐに直ります。

今回昇降不良が出たのは1ヶ所でしたが、
後々の事を考えてツインシェード2台分、
計4ヶ所全てのコードストッパーを交換することにしました。
当店の在庫が2個しかなかったので、
予めトーソーさんから部品を取り寄せておいたのですが、
箱を開けてビックリ。

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全部集中操作用じゃないか……
と言うワケで部品をバラシて必要な部品だけを取り外しました。
問題なのはコイツです。

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左が不良部品、右が良品です。
部品右下(ギアのない側)の口の間に薄い板バネが入っていますが、
右の良品がピンと斜め真っ直ぐになっているのに対し、
左の不良品は少しお辞儀気味になっています。
この板バネが踏ん張らないことでギアの間が開きっ放しになってしまい、
コードが止まらなくなってしまうのです。

今はもう『パディナ』はなくなり、新メカ『クリエティー』へと移行していますが、
その時にちょっと驚いたことがあります。
騒がれたのは新しく発売されたツインタイプのチェーン式ばかりで、
コード式はほとんど注目されず、『パディナでいいじゃん』という声すらありました。
クリエティーのコード式は素晴らしく改良されてます。
コードストッパーは板バネを使わない仕様になり、
コードの挿入も非常に簡単に出来るようになっています。
本体内部を通るコードは前幕用と後幕用が2層構造になり、
糸絡みが少なくなって昇降もよりスムーズになりました。
もっと評価されて良いメカです。

この業界は『アフターはメーカーのするもの』という考えが根強く、
こうして目に見えない部品が改良されても、評価されにくい傾向があります。
パディナの問題を指摘するのと同じ位強くクリエティーの評価もすべきです。
それがメーカーの開発意欲に繋がりお客様の満足へと繋がるからです。

それでは無事に話もまとまったところで、
私の朝のテーマ曲、東京スカパラダイスオーケストラの『星降る夜に』をどうぞ。

誰かCDの直し方を教えてくれ~!!

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どんな風になるのか

D様とはもう7年位のお付き合いです。
最初は他店でご購入頂いた商品のアフターでした。
その後も何かご必要なものがあると声を掛けてくださいましたが、
家を建ててまだ10年程でしたので、
『家を新築するからカーテン頼むね』と
図面を持ってこられた時はとても驚きました。

とても明るいD様ですが、5年程前にご主人との悲しい別れがありました。
お焼香に訪問する際、お香典を渡すことに何となく違和感を持っていた私は、
その数日前に朝日新聞の読者投書欄で紹介されていた
無名の詞を封筒に入れてお渡しすることにしました。
投書をした読者の方もタイトルが分からず、
その詞のフレーズをパソコンで検索しても
2つの個人HPしかヒットしなくて困ったのを今でも覚えています。

インテリアが趣味のD様ですので、今回のお部屋もサスガの仕上がりです。
家作り当初から『チューダー調にしたい』とはおっしゃってましたが、
そのテイストのアイテムを集めて『いかにも』という感じにしないのがD様流です。
今回買われたテーブルも無垢の一枚もので、和テイストの物です。
これにティファニーのステンドグラスとアンティークの家具、
モダン風にも見えるダークレッドのファブリックソファを合わせるそのセンスには脱帽です。
そして仕上げはウイリアム・モリス!

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3連・2連の窓にはシェードとカーテンを正面付けしていますが、
もちろん事前にカーテンとの干渉はお話ししてあります。
他の方法もご提案したのですが、結局この方法になりました。
装飾タッセルはベースカラーのグリーンでもポイントカラーのダークレッドでもなく、
敢えてピンク(サンゲツFU583)にしました。
女性的な仕上がりにするためです。
色の似たクッション(五洋インテックスIM3840)を置くことで、
このピンクが浮かないよう工夫してあります。
クッションをモリスと共布にしないことで出来たのが
テーブルランナーと椅子用の座クッションです。

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テーブルランナーのキータッセルは
カーテンのタッセルと同じシリーズの同色で合わせました。
クッションは飛騨家具で有名な飛騨産業のものを加工所に送ってカバーを作り、
中のウレタンのみ飛騨産業から取りました。
私とD様で幾度となく打ち合わせを重ねて細部まで決めたプランでしたが、
家具との組合せも複雑な為、納品日までどんな風になるのか心配でした。
こうして素晴らしい部屋となり正直ホッとしています。

D様の現場にはこれ以外に最後の仕上げがありました。
レールと同じクラストの中間サポートを4個壁に取り付ける工事です。
そこにはご主人の愛用していた2本のドライバーが飾られます。
ご主人が千の風になったかどうか、私には確かめる術がありませんが、
もしそうなっていたとしたら、少しはお手伝いができたかなと思っています。

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王将戦観戦記

ブログを再開するにあたり、
掲載写真を大きくしたり欄外にカテゴリー枠を設けたのですが、
ちょっとマズイことに気付きました。
この投稿前の時点で
施工例の投稿数が34、レールが18、そしてプライベートも18。
マズイ…
このままではカーテンブログ初の
『プライベートが施工例を追い抜くブログ』になってしまう…。

そんな心配(本当にしてるのか?)を余所に王将戦観戦記です。
場所は私のお得意様である陣屋旅館。
数々の名勝負の舞台となった『将棋の聖地』とも言える場所です。

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正面入口から玄関へと続く小道。
その両脇の自然豊かな庭園と雑木林は、
宮崎駿監督のアニメのイメージにもなっています。
(オーナーの宮崎氏は親戚であり、ここは監督の疎開先でもあったのです)

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写真の左側(写っていませんが)にはレストランの『源氏館』があります。
ここにはロールスクリーン13台とカリモクの椅子に特注でサンゲツの
張地を張った椅子36脚を納めさせていただきました。
真っ直ぐ手前側に進むと本館です。
こちらには客室のプリーツスクリーン、浴室用ブラインドなどを納めていますが、
下の写真のような内装工事もやらせて頂きました。

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元々和室だった場所を会合などで使えるよう、
畳を外して根太を組みコンパネを貼ってじゅうたんに。
右側のガラスにはガラスフィルムを張りました。
スタッキングの椅子も納めさせて頂いております。

今回大盤解説の場所となったのは竹河の間。
最高級室である『松風』での対局の状況がテレビ中継され、
プロ棋士が大盤で状況を解説したり、今後の展開を予想していきます。
左に見えるワーロンを貼った障子とプリーツスクリーン
(畳まれているので見えにくいですが)も当店の施工です。

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さて肝心の対局ですが、羽生王将 対 久保棋王という好対局で、
『棋史に残る名勝負』と解説者が唸るほどの素晴らしい内容でした。
中盤になり、解説者の滝七段、立会い人の行方八段、
そして会場に集まった全ての将棋ファンが
『羽生は香車を打つのが当然』というシーンがありました。
でも、羽生が打ったのは桂馬。
何故?
誰もその意味が分かりません。
皆で今後の展開を何パターンも読んでも、桂馬の必然性が出てきません。
結局桂馬打ちは謎のまま一時間以上が過ぎました。

そして展開は大きく変り
『羽生は詰ませることが出来るのでは?』という状況になります。
再度、解説者が詰み筋を読んでいきます。
するとそこには…
あの時打たなかった香車が、絶対必要な駒として登場するのです。
会場からは『羽生はこの展開を読んでいたのか!!』とあちこちから声があがります。
私も鳥肌が立ちました。

その後形勢は逆転。
羽生は追い詰められ、最後の詰み筋に望みを掛けます。
角で王手。久保棋王の持ち駒は桂馬と銀。
どちらを打っても羽生は角で取り、さらに王手という状況です。
そして久保棋王が打ったのは…銀!
何故?
またもや全員意味が分かりません。
普通、合い駒は弱いものから打つのが当たり前だからです。
その数十分後… その展開を読んでいくと、
驚くことに『あそこで桂馬を打つと詰む』ことが判明します。
会場から大きなどよめきが起きます。
これまで時折冗談を交えて解説していた行方八段の目が一気に真剣になり、
ものすごいスピードで大盤の駒を動かしながら、この名勝負の結末を読んでいきます。
『棋史に残る名勝負』『まさに陣屋事件』という言葉が何度も出てきました。
そしてついに、羽生詰め切れずに投了!
5時間があっという間のとても幸せな時間でした。

翌日、頼まれていた座鏡を届けに対局の場となった『松風の間』を訪れました。

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昨日の名残が少し残った部屋に入ると、自然と背筋が伸びます。
この場所の障子も私が担当させて頂きましたが、
これがいかに光栄なことか改めて痛感しました。
庭では新王将となった久保棋王が写真撮影をしています。
声を掛けたかったのですが、私の大事なお得意様のお客様です。
そんなことは出来ません。
違う場所で会えば『秋葉原にいるオタク青年』のような風貌ですが、
最高に格好良く見えました。

実は、私が将棋好きであることは陣屋様には言わずにいたのですが、
今回たまたま王将戦の当日に仕事の件でお会いしてそんな話になり、
たまたま私が休みだったことから、招待して頂きました。
帰り際、オーナーから一言。
『これで少しはサイトーさんに恩返し出来たかな?』
こんな言葉を掛けて下さる方なので、私は陣屋様の為に頑張れるのです。

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陣屋事件

今から半世紀ほど前の話。
広島のある少年は『名人に香車を引いて勝つ』という言葉を
母の定規の裏に書き残し、プロ棋士を目指して家出をします。
当時の名人戦は指し込み制七番勝負で、三勝差開いたら、
勝っている方は香車を引くハンデ戦になるルールだったのです
(今は全て平手で先に四勝した時点で決着となり五勝負目は行いません)。
少年の名は升田幸三と言います。

昭和27年。
プロとなった升田は当時『不敗の人』と言われた絶対的王者、
木村善雄名人と王将戦で対戦します。
第一局、第二局に勝利した升田は、
次の第三局に勝てば『名人に香車を引いて勝つ』という夢が実現します。
そして迎えた第三局、終盤で升田の優勢はゆるぎないものでした。
名人に残された時間は少なく、妙手の浮かばない木村名人の手は動きません。
記録係は時間を読み続け、ついには『指して下さい』と催促しました。
本当なら、この時点で負けですが、升田はその申し立てをしませんでした。
結果、升田は逆転負けを喫してしまいます。

そして運命の第四局。
場所は神奈川県秦野市の陣屋旅館。
旅館に着いた升田は『ベル』を鳴らしたそうです。
しかし、だれも出て来ません。
自分の目の前を何人もの女中さん慌しく通り過ぎるだけ。
ついに升田は激昂し、旅館を去り第四局を放棄してしまいます。
これが将棋界を大きく揺るがす大事件、陣屋事件です。

事件の真相は今もって大きな謎です。
なぜなら陣屋旅館には『ベル』がないのですから。
升田はその前日まで名人に香車を引かせるという屈辱を与えて良いものかと、
思い悩んだと言います。
この王将戦を指し込み制にする議論があった時も、
升田は名人の権威を重んじ反対の立場でした
(運命のいたずらか推進派のリーダーは対戦相手の木村名人でした)。
第三局の時間切れも指摘せず、負けています。

おそらく升田は名人に香車を引かせる屈辱を与えることを拒みたかったのです。
でも、ルールである以上従わなければいけません。
そこで思い悩んだ据えに思いついたのが、旅館側の非による対戦拒否です。
この騒動の顛末が関係者全員お咎めなしだったのも、
そんな升田の胸中を皆が分かっていたからに違いありません。
その後、升田は騒動の舞台となった陣屋旅館を訪れ、
色紙に俳句だけを書き残し、何も言わずに立ち去っています。

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『強がりが雪に転んで廻り見る』

私はこんな風に解釈します。
『名人に香車を引いて勝つ』などと強がってみたものの、
いざその時になれば大きなトラブルを引き起こし、
その時になって初めて周りの人の大切さを知った。

7年前、ラタン椅子の補修で初めてこの場所を訪れてから
事件の舞台となった陣屋旅館様には本当にお世話になっています。
将棋好き(と言うより棋士という人たちが好き)の私にとって、
この場所を担当させて頂くことには特別な意味があります。
次回、自分の仕事も織り交ぜながら陣屋様で行われた王将戦の観戦記です。

*升田幸三についてはウイキペディアでどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%87%E7%94%B0%E5%B9%B8%E4%B8%89
『たどりきて未だ山麓』という名言の他に、
いかにも氏らしい発言やエピソードがいっぱいで、
将棋を知らない人も楽しめますよ。

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画鳥点睛を欠く

いつもはダラダラと長い私のブログですが、今日はちょっと短めに。
小鳥のさえずりが聞こえてきそうな壁紙が貼られたトイレに、
プレーンシェードを付けました。

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ステンドグラスの照明も山小屋風で良い雰囲気です。
使った生地はキロニーのTKR6087。
いつもはタタミ代(シェードを上げきったときのたまり)を考えて、
10cmほど上げて取り付けるのですが、今回は窓枠のすぐ上に取り付けました。
何故って?

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鳥が見えなきゃね!

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